「三度目の殺人」感想(ネタバレあり)戦略家の弁護士が真実に翻弄される!何を信じればいいのか?三度目の殺人が起こるのか? | 素敵なmono

「三度目の殺人」感想(ネタバレあり)戦略家の弁護士が真実に翻弄される!何を信じればいいのか?三度目の殺人が起こるのか?

こんにちは、monoです。

福山雅治、役所広司、そして広瀬すず。

弁護士、容疑者、被害者家族の織りなす人間模様を静かに謎めいて語りかける映画「三度目の殺人」観てきました。

ずっと、タイトルの答えを探しながら考えながら、弁護士重盛目線で事件を追っていきました。

はじめの重盛の弁護方針は、殺人の有罪無罪を争うのではなく、殺人を認めた上で量刑を軽くするにはどうすればいいのか?という戦略ありきのもの

リアルな法廷の裏側ってこうなのか?という様を見ることもできます。

重盛と一緒に観ている観客も、徐々に容疑者三隈の不思議な雰囲気に引き込まれて行く構成で、見応えあり!

鑑賞後の余韻の深い作品です。

「三度目の殺人」タイトルの意味する事を、観終わった今も反芻しています。

三度目の殺人・データ

2017年9月9日公開。
124分。

原案・脚本・監督:是枝裕和

キャスト

重盛朋章・・・福山雅治(弁護士)

重盛彰久・・・橋爪功(重盛の父、元裁判官)
重盛結花・・・蒔田彩珠(重盛の別居中の娘)

摂津・・・吉田鋼太郎(重盛の同期、元検察官弁護士)
川島・・・満島真之介(新人弁護士)
服部・・・松岡依都美(事務員)

山中咲江・・・広瀬すず(被害者の娘)
山中美津江・・・斉藤由貴(被害者の妻、咲江の母)

篠原検察官・・・市川実日子
小野裁判長・・・井上肇

三隈高司・・・役所広司(容疑者)

あらすじ

夕焼け
重盛は、同期修習生だった弁護士摂津が担当している容疑者、三隈の弁護を手伝ってもらうよう泣きつかれ、接見に行く。

三隈の罪状は、元勤務先の社長を撲殺のうえでガソリンをかけ焼死させ、
所持していた財布を強奪した、強盗殺人の容疑だ。

重盛は、真実よりも戦術を重視する合理主義な弁護手腕を持つ弁護士だ。

今回も自分の方針で、弁護をするつもりだった。

三隈は犯行を認めていたが、犯行動機、犯行の様子など接見のたびに供述が変わるらしい。

クビにされた腹いせに殺した。

金銭目的で殺した。

社長の妻に依頼されて殺した。

本当は、殺していない。

三隈は、25年の長きに渡り刑に服していた元殺人犯だった。

一度目の殺人は、25歳の時。
故郷の北海道で借金取り2名を金銭目的で殺害、放火の罪で起訴。
当時の三隈の裁判官は、重盛の父。

父は、情状酌量の量刑を選択、無期懲役で服役したのだった。

当時の三隈は、やはり供述をコロコロと変える
「空っぽの器」のような感情のない供述を繰り返していたらしい。

「空っぽの器」

三隈は、自分と関わった人は不幸になると言う。
自分は生まれてこなければよかったのだと。

三隈と対峙する重盛も、家庭に恵まれていない。

現在は、離れて暮らす離婚調停中の妻と娘がいる。

娘は、万引きをしては重盛を呼び出すことを繰り返していた。

接見中に三隈から、重盛の家庭での苦労を言い当てられ、三隈に不思議な感情を持つ。

新たな証拠があきらかになる。

三隈は、被害者の妻美津江から、「そのことは黙っていてほしい」と言う内容のメールを受け取っていた。

謎の振込の50万円も確認された。

50万は何のお金だったのか?

山中の娘と三隈が密会していたという証言も出てきた。

二人が、仲良さそうに映る写真が携帯に残されていた。

山中の焼かれた後には、十字架のような模様が浮かび上がっていた。

重盛は徐々に、三隈の真実を知りたいと思うようになっていく。

感想

法廷
ずっと、気になっていたタイトルの「三度目」が何なのか?

最後まで、明確な回答は出てきませんでした。

観た人が、それぞれの回答を考えるという終わり方。

だからこそ、余韻が強く残る。

外国では受けない作風なのではないかと思います。

ベネチェア国際映画祭に正式出品されていましたが、賞は残念ながら取れなかったようです。

特別残酷な場面があるわけでも無く、心理描写で魅せる。

映像の撮影の感じは、50年代の「セブン」「天国と地獄」をモチーフにしているそうで、重厚な感じがあります。

一貫して、役所さんの「空っぽ」な不気味な容疑者の持つ「奥深さ」「空っぽの闇」に引き込まれていく福山さんに同調しつつ話が進む。

法廷が始まるまでの打ち合わせの様子とか、検察官と弁護士のやり取りとかリアル感が出ています。

ああ、仕事としての裁判ってこんな感じなんだろうな。

それぞれの立場を考えると、感情の持って行き場はこうなるに違いないと納得します。

殺人はどんな理由があってもいけないことだと思います。

どんな人も、殺されていい人なんていない。

人が人を裁くのは、間違いだと思う。

でも、不幸な人を見てしまった時。

いたたまれなくなってしまう人がいるのだろう。

助けてあげたいと思ってしまう。

その、救い方が間違っているとしても、裁いただけと正当化する。

人は人を裁いてはいけない。

法廷での審理も正しく行われているのか?と言う疑問も投げかけている気がする。

裁判官は、犯罪をおかす人間は、犯罪を繰り返すと言い切る。

長年見てきた結論だと。

そうなのかも知れない。

でも、裁判官も間違うのではないだろうか?


広瀬すずは、すごい女優さんになったなあと思います。

着実に伸びている。

表情の一つひとつ、言葉のひとつひとつが力強かった。

役所広司さんは、さすがです。

不思議なチカラを持つ三隈の不気味さと優しさと可愛らしさを融合させていました。

鋼太郎さんは、脇に徹していました。

ナチュラルな演技が新鮮です。

満島真之介さん!

目が離せないいい役者になってきました。

良かったです。

福山さんは、立っているだけで男前です。

カッコイイ。

重盛は、三隈と出会って弁護士として一回り成長した様子を見せてくれた。

monoの思う三度目の殺人とは?

役所広司さんと福山雅治さんがガラス越しに対話する。

対話していたはずが、ガラス越しに同化したように映る。

二人がリンクして、見ごたえ十分の素晴らしい画面でした。

見とれてしまいました。

「空っぽの器」

それは、重盛にも当てはまるのではないか?

三度目の殺人は「自分で死刑」の裁きを得たことだと思います。

三隈が、示した十字架の意味するところは自分も磔にするということか?

逃した一羽のカナリヤは、咲江なのだろうか。

「空っぽの器」の中には、家族の愛を入れたかったのかも知れない。

見ごたえある、いい映画です。