こんにちは、monoです。
映画「幼き子われらに生まれ」観てきました。
映画の設定は関東なんですが、重要なロケ地が関西の風景も多く、観ていて親近感がわきました。
浅野忠信さんの年齢を重ねた渋さと、子役の演技がキラリと光る、訴えかけるものの多い映画です。
監督が、「繕い裁つ人」「しあわせのパン」の三島有紀子さんという事も足を運びたくなる映画です。
機会があれば映画館で観ておきたい監督さんです。
上映している映画館は、初めて行ったところでした。
こじんまりとした映画館で、その日がレディースデイということもあり本当に満席でした。
映画は、ゆっくりと丁寧に人物描写が進み、家族と向き合う父親の葛藤をうきぼりにした浅野忠信さんがみごとな演技をしていました。
子役の3人も素晴らしかった!
恵理子ちゃんと沙織ちゃんの車での会話は、泣けます。
こころに染みる映画です。
追記(9月6日)
第41回モントリオール世界映画祭で審査員特別賞受賞されました!
おめでとうございます!!!
幼き子われらに生まれ
データ
2017年8月26日(土)公開
127分
原作:重松清(幻冬舎文庫)
脚本:荒井晴彦
監督:三島有紀子
キャスト
田中信:浅野忠信
奈苗:田中麗奈
薫:南彩良
恵理子:新井美羽
沢田:宮藤官九郎
友佳:寺島しのぶ
沙織:蒲田らい樹
あらすじ
44歳・バツイチ・再婚・田中信は、奈苗と奈苗の連れ子・薫・恵理子の4人家族。
薫は12歳、恵理子は6歳。
薫が6歳の頃に元夫からの暴力により、薫が歯を折る大怪我をしたことも原因で離婚。
それ以後、父親とは会っていない。
当時の薫は、男性を見ただけで泣き出してしまうほどの恐怖が染み付いていた。
奈苗との再婚の決め手になったのは、そんな薫が信には笑顔を見せるようになったことだったのだ。
ところが、最近の信と薫の仲がうまくいかなくなっていた。
さらに、信の仕事も思わしく無く、リストラ寸前での出向扱いになっていたことも妻に言えていなかった。
3ヶ月に一度の実の娘・沙織との面会が唯一の楽しみになっていた。
本音を言える、実の娘・沙織にも言えないでいることがある。
奈苗の妊娠。
新たな生命が生まれることによって、なんとか守ってきていた生活が、徐々に崩壊していくように信の心が崩れていく。
「本当のパパに会いたい」
薫の心の叫びや痛みは、信の心の叫びとリンクする。
信の心もまた、徐々に崩壊していく。
感想
浅野忠信さんってやっぱりすごいなあ。
キムタクとの連ドラ「A LIFE」での演技は、好きではなかった。
あの時は、浅野さんのキャラクターが受け入れられなかったということだったのかも知れない。
この映画の信は、頑張ってる。
頑張って、頑張って父親・夫・仕事をしようとしている。
でも、全部は守れない。
幼い子どもを守ろうとして、再婚して暖かい家庭を築いてまっすぐ家に帰る。
仕事より家庭を大事にする、良き夫。
飲みに誘われても断る。
同僚や上司と飲み屋に行くのではなく、ケーキ屋とか子供のための買い物に行ってまっすぐ帰宅する。
再婚してからは、たぶんずっといいお父さんだ。
でも、12歳になろうという年頃の娘とはうまくいかなくなってきていた。
本当の父親でも、年頃の娘とはそんなものだと思う。
再婚だと、さらに複雑な気持ちになってしまうのかもしれない。
自分の気持が自分でもわからない事って、思春期の女の子にはよくある。
改めて、幸せってなんなんだろう?って考えさせる。
一言では言えない、とっても難しい問題だと思う。
自分の気持ちすらわからないのに、そこに新しい家族が産まれてくるのだ。
どう受け止めればいいのだろう?
嬉しいというより、自分の存在自体がわからなくなってしまう恐怖と不安に心が押しつぶされる。
自分の実の娘と妻の連れ子が、奇しくも同い年という葛藤。
可愛さは、実の娘に決まっているのだろう。
義理の娘との間に、新たに産まれる生命。
その生命を素直に受け入れられない自分が苦しい。
また、娘達も受け入れがたい気持ちでいることを想像して苦しむ信の葛藤も、伝わってきて心が痛かった。
離婚する人も、子供と一緒に再婚する人も今は、珍しいことではない。
monoの周りにたくさんいる。
実態はわからない。
表に見せているものと実際は、違うかも知れないしみんな内面は見せないように生活している。
普通の日常の中の、切り取られた日常が切ない。
本当の父親に会いたいと言う薫の気持ちを尊重して、面会の段取りをつける。
DV夫は、面会の条件にお金を要求するのだ。
薫が前に進む為に、過去との決別をするためにも面会をさせようとする信。
そして、その日が来た。
薫が家を出る。
本当に会いたいと思っているのか?
母親は「そんなわけない!」と言う。
心配になった信は、待ち合わせの場所に恵理子と行く。
そこには、ひとり待ちぼうけを食らっている沢田(宮藤官九郎)が背中を丸めて座っていた。
沢田と信の会話は切ない父親のものだ。
幼い恵理子の無邪気さが、二人の父の切ない場面との対比で癒される。
沢田は、薫にプレゼントを持ってきていた。
どうしようもない男だけど、娘に少しは愛情があったのかもしれない。
自宅に戻ると、そこにも、うずくまる薫がいた。
いい言葉が見つからない信は、プレゼントを手渡し肩を震わせて静かに泣く薫を抱き寄せる。
そこには、親子の愛がある。
沙織もまた、2人の父親の間で葛藤していた。
末期のガンで闘病中の義理の父親。
余命宣告されている父の死を想像しても、悲しいと思えないと悩んでいた。
危篤状態の連絡が入り、信と一緒に病室に行く沙織。
生と死を見つめる信。
「沙織を育ててくれてありがとうございます」信はベッドに向かって頭を下げる。
離婚はしてはいけない。
子供も親も傷つく。
辛い。
ラストの元気な産声は、生きる勇気をくれる。
ラストのすこしうつむき加減の信の優しい表情のアップが、この先も続いて欲しいと思う。
とてもいい表情だった。
家族って、幸せってなんだろう?って考える。
大切に生きようと思う。
大切な人と大切な時間を生きていようと。
おまけ・関西のロケ地見つけた
お土産のケーキは、芦屋のアンリ・シャルパンティエのイチゴの「ザ・ショートケーキ」だ。
自宅は、名塩(西宮)の斜行エレベーター。
沙織との面会の遊園地は、大阪「ひらかたパーク」のメリーゴーランド。