「ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜」
ラストレシピ・データ
2017年11月3日公開作品
126分
監督:滝田洋二郎
原作:田中経一
脚本:林民生
音楽:菅野祐悟
企画:秋元康
キャスト:
二宮和也、西島秀俊、宮﨑あおい、綾野剛、竹野内豊、西畑大吾、兼松若人、大地康雄、笈田ヨシ
ラストレシピを探す旅
1930年、満州に渡った元天皇の料理番が、世界一のフルコース料理を作る事を依頼された。
「大日本帝国食菜全席」
一度食べた料理を完全に再現できる舌を持つ男。
山形直太朗。
その妻千鶴、そして助手鎌田。
3人と現地の料理人「楊晴明」の4人が作り上げた伝説のレシピ。
2002年の日本。
一度食べた料理を完全再現できるという、孤高の天才料理人佐々木充。
佐々木は、身寄りのない孤児として施設で育ち、施設を飛び出したまま人を信じる事が出来ず、料理にも妥協を許せず堅苦しく生きていた。
唯一の友人は、一緒に施設を飛び出した柳沢だけだ。
佐々木は、腕は確かだがあらゆることに融通がきかずに自身のレストランを廃業、借金を背負ってしまう。
借金返済の為に、高額で最後の晩餐のための食事をうけおっていた。
佐々木の元に前金300万、成功報酬5,000万円の依頼がきた。
中国の重鎮、楊晴明が、とあるレシピを探して料理を作って欲しいというのだ。
1930年代の満州で作られたという伝説のレシピ。
もともとは、楊と山形直太朗が作り上げたものだという。
自分の手元から、消えてしまったレシピを探して欲しいというのだ。
佐々木は、楊に聞いた手がかりを元にレシピを探して、関係者から話を聞く旅に出た。
麒麟の舌の記憶
話を聞くという形で、過去の物語が進む。
さすが、「永遠のゼロ」の脚本家さんだ。
同じような印象を持った。
物語は、佐々木が山形直太朗の軌跡を追うという形で進む。
山形も、佐々木と同じく料理に対する厳しい姿勢を崩さない厳しさを持っていた。
自分と似ていると・・・。
セリフにには出ていなかったが、表情だけで表現していた。
二宮さんすごい。
西島さんもまた、映画を牽引していく。
優しい妻の助言を聞き入れ、徐々に料理人として成長していくさまが素晴らしい。
妻の宮崎さんが美しく優しい。
そして、悲しい出来事が起こる。
信じられなく、悲しい。
千鶴さんの出産後のシーンが、一番こころに響いた。
あの横顔が目に焼き付いた。
美しくはかない。
心待ちにしていた一人娘、幸。
可愛く成長する。
千鶴が大好きだった「トンカツ」は、幸も大好きな料理となった。
探していたものは近くにあった
山形が完成させたレシピ。レシピが完成したら開かれる天皇を招待する宴。しかし、山形を雇い入れた三宅大佐は山形にある任務を言い渡す。
山形は、どうしてもその命令に従うことが出来なかった。そして、作り上げたレシピ集を宴の最中に燃やしてしまうのだ。
人種を超えて、全世界の人を楽しませたいという思いから作り上げたレシピが、反対の事に使用されるのが許せない。
美味しいものが、幸せを運ばない。人々の命を奪っていく争いがにくい。そういう世の中がにくい。二宮さんが、多くは画面に映らない。
でも、この映画は佐々木充のための映画だった。山形が完成させたのは、千鶴のためのレシピだ。その最後の一皿は、千鶴の大好きな「トンカツ」
政府の宴のためのレシピではなく、山形の信じるロシア人に預けられ、巡り巡って充のもとにたどり着く。山形が完成させたレシピには、1枚追加されているのだ。
その最後の一皿を充が再現する。それが、ラストレシピ。レシピ集は、充のすぐそばにあったのだ。いつも、充のそばにあった。
それを、知るためのレシピ探しだったのだと知った時、充の瞳には蘇った映像は切なかった。この映画の二宮さんは、セリフではなく瞳で語る。切なさや、憤りや、焦りや、憎しみ。
そして、いつも近くにあった愛情を知った時、本当の天才料理人になれるのだ。料理人の所作の美しさが、この映画のすべてのような気がする。
手の動きで魅せる。
西島さんは色気で、二宮さんは冷静さで。
二人の料理人は、撮影こそ一緒にしなかったらしいが、画面の上では素晴らしい共演をなし得ている。エンドロールは秀逸です。
さすが、料理の鉄人!面白かったです。